カイコガの卵休眠は,他の多くの昆虫のような環境条件の悪化の結果やむをえず一時的に発育を休止する休眠ではなく,不良環境が訪れる遥か以前の生育にとって不都合のない良好な環境のもとで計画される。その休眠は,非休眠時にはみられない特別な代謝系を創出することにより成されている。この魅力あるカイコガの休眠・非休眠がどのように決定されるのか,また胚子発生がどのように停止・進行するのか等の分子メカニズムの解明を最終的な目的として,主に生化学,分子生物学,免疫組織化学的手法等を駆使して研究を行っている。
昆虫のさまざまな色彩や独特な紋様は,捕食者に対する威嚇や警告またその目を欺くための身の保護,更に体温調節や配偶行動時の雌雄の識別などおいても重要な役割を担っており,昆虫の適応的現象を支えている。この興味深い昆虫の色彩や紋様がどのようなメカニズムで発現し形成されるのかの解明を目的として,カイコガの卵や幼虫の皮膚,チョウの翅などを用いて研究を行っている。