日本大学 文理学部 物理生命システム科学科

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研究紹介

中里 勝芳 研修室 研究紹介

研究テーマ

研究テーマ

この研究室では、いろいろなエネルギー変換システムについて幅広い分野で研究をしています。研究のテーマは、光エネルギーを化学エネルギー(有機物)に変換する植物の光合成に関する研究、水の運動エネルギーを電気エネルギーに変換するための新しい水力発電システムの開発、また、バイオメカニクスという分野の研究もしており、人力パワーで飛べる巨大な人力羽ばたき機の作製に挑戦しています。
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»流水発電装置
»バイオメカニクス

 

 

光合成

チラコイド膜の原子間力顕微鏡観察

チラコイド膜の原子間力顕微鏡観察

私たちを含めた生物は、生きて行くために生命活動に必要なエネルギーを獲得しています。このエネルギーを人間は、肉、穀物、野菜などの食事により体内に取り込みますが、肉食動物は草食動物を、草食動物は植物を食べてエネルギーを得ているのです。では、植物や藻類などは、どのようにエネルギーを獲得しているのでしょうか。これらの生物は、太陽光エネルギーを使って二酸化炭素と水から有機化合物である糖をつくっています。その全過程は光合成と呼ばれ、光合成をする植物は、副産物としては私たちが呼吸をするために必要な酸素まで作り出しているのです。

PSIIの結晶構造

PSIIの結晶構造

光合成の過程は複雑ですが、巧妙にできており、いくつかの過程に分けることができます。大きく2つに分けた場合は、葉緑体のチラコイド膜を利用して太陽光エネルギー(光エネルギー)を安定な化学エネルギー(高エネルギー化合物のNADPHとATP)に変換する過程(明反応)と、これらの高エネルギー化合物を使って葉緑体のストロマ中で二酸化炭素を有機化合物に合成する過程(暗反応)に分かれます。この明反応のうち、光エネルギーをクロロフィルなどの光合成色素で吸収し、そのエネルギーを化学エネルギーに変換するタンパク質−色素複合体は光化学系とよばれます。

結晶化ロボット

私たちの研究室では、チラコイド膜に埋め込まれたタンパク質-色素複合体やその他のタンパク質が膜内でどのように分布しているのかを調べ、その分布状態が光の強さや温度等の影響でどのように変化するかについて研究しています。そのために、タンパク質-色素複合体などの特定のタンパク質に抗体を結合させ、原子間力顕微鏡(AFM)でチラコイド膜表面の凸凹を水中観察しています。 図は抗体をタンパク質に結合させる前のチラコイド膜グラナを水中で観察したときのAFM像(水中)です。チラコイド膜のタンパク質のうち、膜表面から突き出している部分ほど黄色がより薄く表示されています。観察された多くの出っ張りは光化学系II複合体であると推測されます。
 
 
 
 

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流水発電装置

化石燃料の燃焼によって生じる二酸化炭素は地球温暖化の元凶と考えられています。この環境問題を解決するためには化石燃料に依存しないエネルギー獲得社会を早急に実現しなければなりません。中里研究室では、再生可能な自然エネルギーを利用した持続可能な社会を実現するための取り組みの中で、水力発電に注目しています。水力発電と言っても、巨大なダムを作って水力発電をする従来の方法ではありません。我々の注目しているエネルギー源は河川、農業用水路、潮流や海流の流水エネルギー(水の運動エネルギー)です。国内には多くの河川や灌漑用水路があり、その流水エネルギーは莫大です。また、四方を海に囲まれた我が国は、潮流や海流の莫大な流水エネルギーを発電に活用するうえで有利です。しかし、その流水エネルギーは発電のためにほとんど利用されていないのが現状です。 再生可能な自然エネルギーを積極的に利用するエネルギー供給社会を実現するためには、近い将来、河川、灌漑用水路、潮流や海流の水流エネルギーを有効に利用しなければならなくなると考えています。

しかし、自然環境下の流水を使って発電を継続して行うためには、クリアーしなければならない大きな問題があります。それはゴミ問題です。自然環境の流水には様々な物(植物、ビニール製品等のゴミ)が流れています。実際に水力発電を開始すると徐々にゴミが水車の羽根にからみつき、最悪の場合は羽根が回転しなくなってしまいます。羽根に付着したゴミを除去する作業は結構大変です。特に、潮流発電や海流発電の場合には、ゴミの除去作業に多くの時間と多額の費用が掛かります。また、ゴミ取り作業のために発電を停止しなければならず、安定して電力供給ができなくなります。このゴミ問題を解決しない限り、流水発電の実用化は困難であると思います。

流水で発電できる水車にはいろいろありますが、その中で水車効率が最も高いものはプロペラ水車です。しかし、この水車の場合はゴミがプロペラに絡みやすく、その除去は特に大変です。そこで、中里研究室では、水車効率はプロペラ水車より多少低くなっても、羽根に付着したゴミの除去が容易であり、しかも自動的にゴミを除去できる新しいタイプの流水発電装置を開発しています。この装置は、流水を受けた複数の羽根(水深方向に設置した長い翼)が流路幅方向に往復直線運動を繰り返して発電します(動画)。羽根の継続した往復直線運動が、電力を用いずに、流水の力で自動的にできるように工夫しました。また、羽根が往復運動するときの力を発電するための回転運動の力に効率良く変換するために、新しい運動変換機構を開発しました。問題のゴミの除去ですが、この水車の場合は水深方向に長い羽根であるため、羽根の下端を下流側に数十度回転するだけで、羽根に付着した様々なゴミ(植物やビニール等)を簡単に除去できることが河川での実験で実証されました。この水車の水車効率は、往復運動の幅(ストローク)が長くなると高くなることがわかっています。ストロークを数メートルにするとプロペラ水車の効率にかなり近づくはずです。 現在、羽根の付着物を自動的に除去できるさらに大型の流水発電装置を作製しています。

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バイオメカニクス

鳥のように翼を羽ばたかせて空を飛んでみたいと思った人は多いでしょう。その人なかで、実際に鳥の羽ばたき運動を真似た羽ばたき機をつくり、人力羽ばたき飛行に挑戦した人もいます。しかし、その努力はことごとく失敗に終わっています。このことは、人が飛べるような大きな軽い翼を作り、羽ばたきに運動によって大きな揚力と推力を得ることが大変難しいことを物語っています。翼の羽ばたき運動は大変デリケートであり、翼運動の高度なコントロール技術を必要です。例えば、どんな鳥でも翼の打ち下ろしと翼の打ち上げを繰り返しながら(フラッピング運動)、適度に翼の迎え角を変化させています(フェザリング運動)。また、翼を前後方向に移動させる運動も行っています(リード・ラグ運動)。このように、鳥の翼運動を真似たメカニカルシステムの構築は大変難しいのです。さらに、軽量・強力・確実性が絶対条件として要求されるとなると、人力による羽ばたき飛行はもはや実現不可能であると一般に考えられています。

巨大なモデル羽ばたき機

巨大なモデル羽ばたき機

しかし、当研究室では実際に人力で飛べる羽ばたき機の作製に挑戦しています。中里教授が作製した世界最大の動力羽ばたき機(翼長3.3m、1.2馬力エンジン搭載、総重量2.7kg)の上昇飛行の成功(朝日新聞朝刊第1面、2007年2月25日掲載)以来、さらに大型の羽ばたき機の開発を行なってきました。現在、片翼12m(全翼長24m)の巨大な人力羽ばたき機の作製を進めています。適度なしなやかさをもつ巨大な軽い翼の作製やその翼を人力パワーで効率良く羽ばたかせるためのメカニカルシステムの開発など乗り越えなければならないいくつもの重要な課題がありますが、なんとか解決して人力羽ばたき飛行を実現したいものです。